眠りは、足し算と引き算でできている
― 素材より大事な“重ね方”の話
前回のコラムでは、
羽毛・綿・ウール・シルク・麻という
それぞれの「素材の性格」について整理しました。
けれど、ここでひとつ大事なことがあります。
実は――
素材そのものよりも大事なのは、“どう重ねるか”です。
寝具は単体では完成しません。
眠りは、「足し算」と「引き算」で整えていくものなのです。
寝具は“組み合わせ”でできている
掛け布団1枚ですべてが決まる。
そんな単純な話ではありません。
● 羽毛布団+毛布
● ウール肌掛け+綿ケット
● 真綿布団+薄手の羽毛
● 麻ケット+エアコン調整
どれも正解になり得ます。
問題は、
今の体温に対して
何を足すか
何を引くか
なのです。
足し算とは「厚くする」ことではない
足し算とは、
● 保温力を足す
● 吸湿性を足す
● 肌触りの安心感を足す
● 重さ(包まれ感)を足す
不足している“機能”を補うことです。
寒い人と汗かきの人では、
足すべきものが違います。
足す=厚くする
ではありません。
引き算ができないと、眠りは重くなる
多くの人が苦手なのが引き算です。
● 暑いのに布団を減らさない
● エアコンを強くして寝具はそのまま
● 重さを「安心感」と思い込む
これは、引くべきものを引いていない状態です。
最近の住宅は気密性が高く、
昔よりも“引き算が必要な環境”になっています。
「夏でも冬用羽毛」という考え方について
近年、テレビなどで
夏でも冬用の羽毛布団を使い、
エアコンで室温を下げて眠る
という提案が紹介されることがあります。
理屈としては理解できます。
もし室温を冬と同じ環境まで下げられるなら、
冬用の寝具を使うことも成り立ちます。
ですが現実には、
● 夏に冬と同じ室温まで下げるのは容易ではない
● 下げ過ぎれば身体への負担も大きい
● 電力や環境負荷の問題もある
という側面があります。
仮に「一年中20度前後に管理する」という前提であれば、
寝具もそれに合わせた設計(例えば合い掛け程度)を考えるべきでしょう。
問題は、
寝室環境と寝具の話がセットで語られていないことです。
素材単体の話だけが広がると、
足し算と引き算のバランスが崩れてしまいます。
眠りは、
寝具だけでも、エアコンだけでも整いません。
両方をどう組み合わせるかです。
重ね方で体温は変わる
同じ羽毛布団でも、
● 毛布を内側に入れるのか
● 外側に掛けるのか
で体感は変わります。
同じウールでも、
● 肌側に置くか
● 外側に使うか
で湿気の抜け方が違います。
これは流行ではなく、
素材の性格の問題です。
だからこそ、
「テレビでこう言っていたから」ではなく、
自分の環境に合わせて考えることが大切です。
季節はグラデーションで変わる
眠りは、
● 今日は1枚減らす
● 今日は薄いものを足す
という微調整の積み重ねです。
夏仕様・冬仕様と極端に分けるよりも、
足し算と引き算で整えるほうが自然です。
素材は“役割”
羽毛は軽く保温する
ウールは湿気を調整する
綿は受け止める
シルクは肌に寄り添う
麻は熱を逃がす
素材は主役ではなく、役割を持つパーツです。
パーツは組み合わせてこそ意味を持ちます。
季節ごとに素材を変える、という考え方もあります。
ただし、これはあくまで一例です。
住環境や体質によって、組み合わせは変わります。
まとめ|完成形は固定ではない
寝具に絶対の正解はありません。
● 季節で変わる
● 年齢で変わる
● 住環境で変わる
だからこそ、
何を足すか
何を引くか
を考えられることが大切です。
眠りは、足し算と引き算でできています。
次回は、
寝室環境(温度・湿度)を含めた
具体的な組み合わせ例を整理していきます。





